人間健康科学系専攻 臨床ゲノム解析学
准教授
京大の自由と多様性の中で切り拓く未来の医療 ―臨床検査技師、大学教員として―
ご自身の仕事や研究で心がけておられること
私は教員になる前、京大病院検査部で臨床検査技師として5年間勤務していました。仕事に携わる中で、検査に不安を抱いたり検査結果に一喜一憂したりする患者さんやご家族を間近で見てきました。私は専門的な知識や技術だけでなく、臨床経験を生かして、こうした教科書では学ぶことのできないことを講義で伝えるよう心掛けています。また臨床検査技師は検査データを見るプロフェッショナルですので、その専門性を生かした研究を行っています。私は白血病の遺伝子解析を主な研究テーマとしていますが、白血病患者さんの臨床情報と遺伝子データを注意深く比較検討することで、新たな発見が得られることもあります。
どのような部分に面白さがあると感じますか
例えば白血病患者さんのサンプルを用いた網羅的な遺伝子解析の結果、見つかった遺伝子の異常を調べると、他の特定の遺伝子異常と重複している割合が高かったり、遺伝子異常を持っている方は再発の頻度が高かったりします。こういった場合、見つかった遺伝子異常は他の遺伝子異常と協調して白血病の発症や再発を引き起こしていることが予想されます。このように臨床サンプルの解析から予想外の気づきが得られる場合があり、やりがいを感じています。これからも、少しでも多くの病態メカニズムを明らかにし、新しい検査法や治療法につなげることで、現在そして未来の患者さんに還元できればと考えています。
あなたの思う京都大学らしさをひとことで表現してください
京都大学では学部入学から17年になり、なかなか一言で表現するのは難しいのですが、「自由と多様性」でしょうか。私は学生時代にふと海外の臨床検査技師制度に興味を持ち、ASCP internationalという臨床検査技師の国際資格に日本在住者として初めて合格し、京都大学総長賞をいただきました。このように京都大学には関心のあることを自由に追究する風土があり、それを後押しする制度もあります。また多様性については、総合大学ですので学生時代は専門分野以外の知的刺激を大いに受けることができましたし、研究者となってからも情報系の先生や病院の各診療科との共同研究を通してその恩恵を受けています。
京都大学医学研究科・医学部が125周年を迎えメッセージ
卒業生、教員、職員の方々が築いてこられた125年にわたる輝かしい歴史に敬意を表します。京都大学医学研究科・医学部が、世界をリードする医学研究者や高度医療専門職を輩出する存在として今後も発展していくために、私自身も研究、そして後進の育成に微力ながら貢献してまいりたいと思います。